なかや一博 ブログ

月別アーカイブ: 2022年11月

山中温泉

ハァー 忘れしゃんすな 山中道を 東ゃ松山 西ゃ薬師
ハァー 送りましょうか 送られましょうか せめて二夫の橋までも

ご存知、民謡の名曲「山中節」の一節である。この哀調を帯びた名曲のふるさと「山中温泉」に一晩久しぶりに宿泊した。従来は、北陸自動車のICに近い、片山津、粟津,山代等の温泉に宿泊し、山中温泉は地理的にどうしても遠方との思いがあった。
その中で今回「山中」を選んだのは、鶴仙{かくせん}渓谷の紅葉がまだ見頃との情報が入ったからである。

それにしても、「山中」は以外に近かった。従来の「加賀」ICが「加賀・山中」と標識が変更になっていた。不思議に思いながら下車するとそこからは立派なバイパス道路が「山中」へ向かって開通していた。なるほど、これならIC名を変更したのも理解できる。時雨模様の天候であったが順調にホテルに到着した。

翌日は幸いにも雨は上がっていた。山中温泉周辺には、見所が沢山ある。俳聖松尾芭蕉が奥の細道紀行の折、この地に1週間余り滞在したことによる「芭蕉の館」、女優・森光子に関する記念館,総湯などがあるが、時間の関係上今回は「鶴仙渓」遊歩道を「こおろぎ橋」から「黒岩橋」まで約1㎞を散策した。

雨上がりのため、落ち葉に足を掬われないよう、かつ、アップ・ダウンの激しい狭い遊歩道を、手すりにつかまり乍ら1時間余りをかけ散策した。渓谷というだけあって、私達が想像する渓谷よりも小さいし川幅も狭い。でも立派な渓谷でありV字峡である。そのV字の底を歩いている訳で、足元の落ち葉を踏みしめながら、対岸の景色が目に入る。

又、頭上を仰いでも、黄色、赤、緑、情報通りまだ紅葉は胸を張って、私の足を度々止めた。途中京都鴨川を連想させる「川床」の風情も一幅の趣を持って楽しんだ。限られた時間であったが晩秋のひと時を過ごした。
山中温泉――歴史は古く、今から約1300年前奈良時代の高僧行基が発見したと伝えられる。行基は丸太に薬師仏を刻んだ祠を造り、温泉のお守りとした。多くの人が「山中」を訪ね、その湯で病を癒したとされる。

鶴仙渓―――山中温泉にある渓谷。大聖寺川の中流にあり「こおろぎ橋」から「黒岩橋」に至るまでの約1㎞の区間を指す。
砂岩の浸食によって数多くの奇岩が見られる景勝地であり、南北に長い山中温泉の東側を並行し、温泉客の散策地として人気が高い。
鶴仙渓は明治時代の書家・日下部鳴鶴 が好んだ渓谷に由来していると言う。奇岩としては、烏帽子岩、蛙岩、弁慶岩等ある。
写真は、鶴仙渓、こおろぎ橋、川床。

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晩秋の称名滝

初雪の 高嶺を裂きてみ空より 紅葉の中に落つる 大滝 
昭和11年秋 川合玉堂

全国的に人気スポットの一つである、称名滝を11月7日{月}久しぶりに知人と訪ねた。当日は暦の上では立冬であったが、冬は名のみので、抜けるような青空に、雲一つない快晴であった。
標記の一首は、明治、大正、昭和の文人墨客の一人であり文化勲章受賞者の川合玉堂の歌である。

彼は、昭和11年11月4日当時の中新川郡滑川町曲渕の赤間徳寿氏{元・衆議院議員、初代滑川市長}宅に投宿、翌朝「時雨さす、加積の里に一夜寝て、今朝立山に仰ぐ初雪」と詠み、称名滝へ向かった。{歌碑は現在赤間邸中庭にある}、標記の歌碑は八郎坂へ向かう「ひりゅう橋」の袂にある。

それにしても、日本語は美しい。文部省唱歌に紅葉{もみじ}明治44年がある。
「秋の夕日に照る山もみじ、濃いも薄いも数ある中で、松を彩る楓や蔦は、山のふもとの裾模様」
正に一幅の風景を思い浮かべる。こんな美しい言葉を多国語ではどう表現するするのだろうか。やはり日本語に勝る繊細な美意識を表わす言語はないと思う。

さて、最初に現れたのは称名川左岸の「悪城{あくしろ}の壁」は見ごたえがあった。次いで、川合玉堂の歌碑を見て、滝壷に向い、橋から眺める男性的で雄大な瀑布には毎度のことながら圧倒される。滝しぶきを浴びながら暫し見とれていた。
残念ながら落差500mのハンノキ滝は水枯れで落下していなかった。日光華厳の滝、那智の大滝など多くの滝を見てきているが、滝壷近くで眺める称名滝は圧巻である。紅葉は盛りを多少過ぎたとは言え、まだ見どころはあり、しかも青空にV字の渓谷に落下する大瀑布、緑の木々の中にまだまだ残る落葉樹の鮮やかな彩り。
当日は平日だったこともあり県外ナンバーの車も、観光客も以外に少なかった。以前、NHKの番組で冬の凍結したハンノキ滝を登攀した番組や、称名滝を登り称名峡谷を探検した番組が報道されたことがあったが、いろんな冒険家がいることに驚いたことがあった。昼食は近くの山菜専門店で舌鼓を打ち大満足の晩秋のひと時であった。

ここで称名滝とハンノキ滝について記す。
称名滝
立山にその源を発する称名川の流れが立山の大噴火による溶結凝灰岩をV字型に150mも深く侵蝕した称名廊下の末端から落下する大瀑布である。この滝は4段に分かれ、第一段は40m、第二段は58m、第三段は96m、第四段は126m、これが連続して一条の滝となり、最上部の爆流落差30mを含め、その全落差は350mを有している。
又、直径約60m、水深6mの滝壷に落下する水は凄まじい自然の力を誇示している。称名滝を含む称名峡谷は、自然景観に優れ、学術的価値も高く、又保護すべきものとして、国の名勝及び天然記念物に指定されている。

ハンノキ滝
雪解け水や雨の多い時だけ称名滝の右側に現れる滝。見られる時期が限られているため、幻の滝とも言われその為、正式に滝には認定されていない。落ち口は称名滝より高く、落差500mは季節によっては日本一と呼ばれる。

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