滑川商工会議所主催による恒例の新春講演会が1月29日{火}午後2時から同所3階ホールにおいて開催されました。第1回の講師は長谷川幸洋氏 第2回は田崎史郎氏 第3回は手嶋龍一氏 そして、今回の講師は元・防衛大臣・拓殖大学総長で安全保障のスペシャリストである森本敏氏でした。
演題は、激動の2019年を読み解く―「今後の国際情勢と日本の課題」でした。1時間半余りの内容は、米中関係、日韓、日朝、日露、日米問題でした。米中関係では中国が海洋進出を続ける中、経済援助を名目に東南アジアやアフリカ諸国に影響力を強め、返済が滞るスリランカでは港を実質手中に収めた例を挙げて、米国の歴代大統領は中国がこんなに早く成長するとは思わず甘く見ていた。
これに気付いた米国は、米国第一主義を掲げるトランプ大統領によって、対中国貿易の大幅赤字解消を求め、米中関係は現在ギクシャクしている。加えて、米国司法省は、米国の要請でカナダ当局が逮捕した中国通信機器大手ファーウェイの孟副会長をニューヨークの連邦大陪審が起訴した。これを受けて、同省は、孟被告の身柄引き渡しをカナダ当局に正式に要請すると表明した。
対して中国は「強烈な不満を表明」し、米中関係のさらなる緊迫は確実な状況である。米中関係が悪化すると、過去の例からしても日中関係は良好になる。今がその時である。
いずれ米中関係が改善されると、次は、日米貿易摩擦問題に移るとのこと。
日韓関係は、従軍慰安婦問題、徴用工、韓国海軍の駆逐艦による海上自衛隊P1哨戒機へのレーダー照射問題や、片や韓国側主張の東シナ海での海上自衛隊P1哨戒機が低空で威嚇飛行したとする問題、そして、竹島問題など過去の歴史を紐解きながら、韓国の非を、日本の正当性をわかりやすく解説されました。
特に、徴用工問題では、日本と韓国とは、国家レベルの関係において、決着は既についている。それが日韓請求権協定などであり、別途、韓国に5億ドルを渡している。当時、日本では1ドル360円の時代であったから、5億ドルは1800億円。しかしそれは昭和40年のこと。
今日の貨幣価値から言えば、10倍の1兆8000億円から2兆円位という。しかも、韓国民間において日本に対しその賠償を求める場合があっても、その5億ドルによって韓国政府が対応することになっていたのであり、日本が対応する義務はまったくないのである。私も全く同感です。
ましてや国と国とで結んだ条約や協定は、それぞれの国の、司法、立法、行政、の上にあるものであり、韓国最高裁は、これを無視して、誤った判決を出したことは誠に遺憾であると思います。いずれにしても、この様な問題が日韓に横たわっている韓国に対し、日本はどう向き合えば良いのか?との私の質問に対し、森本氏は「いちいち反論したりせず、大人の対応すること」とお答えされましたが、この答弁も大人の答弁だったと思います。
また、氏はこの問題で明日30日訪韓するとお話になられましたので、私は、大変失礼な発言でしたが、毅然とした対応をされることをお願いしました。氏も同様な考えであると述べられました。又、米韓関係が悪化すると、在韓米軍が縮小される恐れがある。そうなると、日本の安全保障に重大な影響がある。だから、日米韓の連携の重要性にも触れられました。
さて、日露関係で北方領土返還については、大変難しい問題である。領土の帰属や主権、加えて、日米安保条約と北方領土の絡みやラブロフ外相の発言などを考えると、そう簡単にはゆかないだろう、との見解でした。最後に前述の質問と共にもう1点質問しました。
それは、氏が民主党政権下での防衛大臣でした。その経験から3人の総理や、国務大臣、お付き合いされた国会議員などの評価や、エピソードをお聞きしたところ、もし民主党政権下で野田氏が最初の総理であったら、もう少し変わっていたと思う。とのことでした。
考えれば、現職の大学の総長であり、かつ、現職の内閣参与であり、やはり他のジャーナリストと違い、発言も大人の対応にならざるを得ないのだろうと思いました。
いずれにしてもこの様な素晴らしい講師を迎えての有意義な講演会が入場無料で開催しておられる滑川商工会議所に感謝致します。