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滑川高校薬業科特別講演

3月13日{月}午前9時50分~10時40分まで薬業科生徒1年生と2年生生徒を対象に「富山のくすり」と題し講演しました。
これは1月25日北部高校に次いでのものです。私自身滑川高校出身であり、同窓会長も務めている者として、つい力がはいりました。本題に入る前に、WBC,侍ジャパン、ワールドベースボール、クラシックで活躍中のロッテ球団石川歩投手の話をした時、生徒諸君の瞳が輝いていました。彼は、本校出身者であり様々な分野で同窓生が活躍している報に接すると誰もが嬉しく思うし、誇りにも思います。それが、母校の存在であると思います。

さて、本題に入り「富山のくすり」取り分け家庭約配置販売業を中心に話しました。
元禄3年{1690}江戸城大広間{帝鑑の間}に控えていた、第2代富山藩主前田正甫公は居合わせた三春藩主秋田河内守輝季公の突然の腹痛に出くわし、懐中の薬聾から丸薬[反魂丹]を取り出し服ませたところたちどころに平癒し、それを目の当たりにした諸国大名が、その妙薬の霊験あらたかなる効用に目をみはり、各藩の領内で置き薬が始まったと言う「江戸城腹痛事件」の一説から話し、その商法が、用を先に、利を後にするという「先用後利」つまり、預けた薬のうち、使用した分の代金だけを後から請求する画期的な商法を説明しました。

当時、医療が普及していない時代にあって、いつ、どんな病気にかかり、どんな薬を使用することになるかわからない状況の中で、数種類もの薬を購入、備蓄することは、当時の多くの民衆に経済的に不可能な話。
そうした中で、先用後利の売薬商法は地域の人々にすれば理想的なものとなり、同時に売薬行商人にとっても継続的な取引と信頼関係の醸成に結びつくことになったこと。
又、文化13年{1816}半官半民で「反魂丹役所」が設置され官民一体となって売薬行商人の教育の徹底と薬の品質確保向上に取り組み今日に至る伝統の礎を築いたこと。

明和3年{1766}富山西3番町に開かれた「小西塾」は当時の日本3大寺小屋と言われるほどの大規模なものとされ、富山売薬が飛躍的に進展した文化年間{1804-17}には急速に寺小屋の数が増加したとされました。当時の寺小屋の学習内容を北陸三県で比較した場合、読み、書き、については大きな差異はないものの、算については、富山9割弱に対し、石川、福井が5割前後といった記録があると言われています。
特に算では、算術や珠算をはじめ、高度な和算として知られる関流算法が取り入れられるなどしたことは、商売上必要にせまられてのことと思われます。文献によれば文久年間(1861-63)には富山藩だけで売薬行商人数が2200人を数え、年間売上高は20万両に上がり,藩財政の一翼を担っていました。

しかし、明治に入って、売薬業はそれまでの東洋医学から西洋医学への転換を求められた。特に、営業税は3倍余りの増税となり、明治16年{1883}には、「売薬印紙税」として薬に10%もの消費税が付加された・デフレのなかの重税でした。このような苦境の、中で売薬行商人たちは次々に新しい事業を興していきました。
明治9年,洋薬を取り入れた製剤会社広貫堂設立。{各地域でもそれぞれ設立。}11年、仲間たちへの融資と財産を保持する為、「富山第百ニ十三国立銀行{現北陸銀行}を設立{各地でもそれぞれ設立。さらに26年には商人たちの献金で「共立富山薬学校」が開設されました。

また、30年には「富山電灯会社{現北陸電力}}を設立し、32年には大久保発電所を建設して北陸初の自力発電を図ります。小口融資を求める仲間たちの為に、35年「富山売薬信用組合{富山信用金庫}」も生まれました。{各地で相次ぎ設立}このほか、売薬業にかかわる業種{鉄道、保険、出版、新聞、印刷、容器製造など}の会社設立にも力を注ぎました。
正に、今日、富山県経済の中心的役割を担っている北陸銀行や、各地における信用金庫、北陸電力など、富山県近代化への基盤を築いたのは売薬商人たちであり、それが今日もなお脈々と生き続いている流れの中に滑川高校や北部高校に薬業科があることを話しました、
そして、平成27年{2017}の医薬品生産額が暫定値であるが、富山県が7356億円と全国1位となり2位の埼玉県の6417億円に1千億円以上の差をつけ、初めて日本一になる可能性がでてきたことも話しました。

最後に、今日これほど医学が発達し、医療機関が整備され、薬局、ドラックストアーなどが普及していても、何故、配置販売業が存在するのか?
それは、「先用後利」の商法はもとより、消費者との信頼関係、それぞれの家庭のヘルス・コンサルタントとして、薬に対しての情報の提供や健康相談な、自己治療すなわちセルフ・メデケーションの役割を果たし、社会が必要とする職種であること。
それ故、300年もの長きにわたり国民生活の中に定着していることを力説し、一人でも配置販売業に従事される事を求め話を終えました。

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<滑川高校薬業科特別講演にて>



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