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立山砂防の防災システムを世界遺産に

初雪の 高嶺を裂きてみ空より もみじの中に 落つる大滝 称名滝にて  川合玉堂 

10月30日{13時30分―17時}富山国際会議場メインホールで、世界遺産登録推進シンポジウム{主催・富山県世界遺産登録推進事業実行委員会}が開催された。
開催主旨は「富山県は、日本イコモス委員会によって「日本の20世紀遺産20選」に選定された立山砂防の歴史的砂防群の世界遺産登録を、関係機関や民間団体等と連携しながら目指す」とパンプレットにあります。
そして、今回のシンポジウムでは、立山砂防の世界遺産登録に向けた評価を確立するため、世界遺産の最前線で活躍する専門家による世界遺産を活かしたまちづくりについての講演や世界遺産とツーリズムの現状・防災遺産のツーリズム活用についてのパネルディスカッションをとおして立山砂防の顕著な普遍的価値を広く発信する機会として企画されたものです。
 
当日は、
13時30分 開会 主催者挨拶 新田八朗{富山県知事}
13時45分 基調講演「世界遺産を活かしたまちづくり」宗田好史氏{京都府立大教授}
14時45分 報告 「富山県の立山砂防の世界文化遺産登録への取り組み」 新田八朗 富山県知事
15時30分―17時 パネルディスカッション
 ・コーディネーター 西村幸夫氏{日本イコモス国内委員会顧問}
 ・パネリスト 松浦晃一郎氏 {第8代ユネスコ事務局長}
        宗田好史氏 {京都府立大・教授}
        小山内信智氏 {政策研究大学院大学教授}
        北河大次郎氏 {文化庁文化財調査官}

それぞれ専門分野のエキスパートを一堂に会したシンポジウムでした。

ご存知の通り、立山カルデラは、今から163年前1858年{安政5年}、跡津川断層の活動において推定M7,3-7,6の安政飛越地震が発生し、大鳶山、小鳶山が崩壊し約4億㎥の大量の土砂が立山カルデラとその出口付近に堆積し天然ダムできた。
その後、ダムが決壊し大土石流が発生した。これが安政の大災害である。その後、常願寺川は氾濫を繰り返す暴れ川に変わり人々を苦しめた。そこで1906年{明治39年}富山県は砂防工事に着手し1926年{大正15年}より国に引き継がれた。

立山カルデラでは富山平野で暮らす人々の生命や安全を守るため、厳しい自然環境の中に、今日でも砂防工事が続けられている。これによって長年にわたり崩れを防ぎ、流れ出す土砂を止め、下流の富山平野に住む人々を土砂災害から守り続けてきた。それが立山カルデラの歴史的砂防施設群として存在している。
特に1939年{昭和14年}に完成した「白岩堰堤」は副堤をふくめた総落差が108mと日本一の高さの大規模な堰堤だ。1936年{昭和11年}に完成した「本宮堰堤」は、日本最大級の貯砂量500万㎥を誇る。「泥谷堰堤」は1938年{昭和13年}に完成した階段式堰堤で、渓岸や山腹を安定させ、崩壊地の植生回復に寄与している。

これらの防災遺産は、今なお現役で国土の保全に重要な役割を担っている。2017年{平成29年}11月には、常願寺川水系を一体的に治める治水対策の礎となった施設であり、我が国の治水上、価値が高いとして、すでに指定されていた白岩堰堤に、本宮堰堤と泥谷堰堤を加え「常願寺川砂防施設」として国の重要文化財に指定された。{一部シンポジウム資料より}

3時間半にわたる内容を限られた文章で述べることは困難ですが、世界遺産登録申請にはまだまだ克服すべき課題があること。
例えば重要文化財に指定された3ヶ所の堰堤を中心にすべきなのか。或は、それら等を含めたエリアとすればその範囲は。などがあるが、何と言っても県民の盛り上がりが必要不可欠であることだ。
その為にも、小学生の総合学習の場でも取り上げるべきとか。また、ユニークな意見でしたが、子供たちに「トロッコ電車に乗って、たどり着いた天涯に富山平野を守ってきた天涯の村があった」などの童話を作ってはなどの提案もありました。

いづれにしても、富山平野に住む私たちが、災害から守られているのは立山砂防のお陰であるとの意識が希薄なような気がする。それは、普通災害復旧工事と言えば,我々の目に見える場所で行われることがほとんどで,それ故、その有難さを十分感じることができる。
しかし、立山砂防工事は我々の暮しから、遥かに遠い立山カルデラの中であることが、立山カルデラや砂防工事そのものへの認識を希薄にしているのだろう。このシンポジウムを機に改めて立山砂防工事の重要性を再認識した。
国内外へのさらなる発信が必要であり、いつの日か「日本固有の防災遺産―立山砂防の防災システム」が世界遺産に登録されることを願うものです。
地鉄立山駅向かいに「立山カルデラ砂防博物館」があり是非をお勧めしたい。

写真は、パンフレットとシンポジウム風景。

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